現代の広告手法として、もはや当たり前となっているGoogle AdWords。しかし、平成27年4月に、消費税法の一部が改正され、主に国外の役務に対する電気通信利用役務の提供と内外判定基準、課税方式が見直されました。
これまで、Google AdWordsを利用して広告宣伝している企業にとっては、その費用の支払いは『不課税取引』と言って、消費税が発生していませんでした。今回の改正で、消費税の納付が義務付けられてしまったのでしょうか?
今回の改正で何が変わったのか?
今回の消費税の改正では、国外との役務の提供に対する消費税の課税の見直しがされています。主な内容としては、①消費税か否かの判定基準、②課税方式が挙げられます。
①消費税の判定基準
従来の判定基準では役務の提供が行う者の場所で判定されていました。そのため、Google AdWordsを利用した場合、Googleは国外にあり国内で役務の提供が行われていないので、その取引は不課税取引として消費税が発生していませんでした。
しかし、今回の改正では電気通信利用役務の提供の判定基準が、『役務の提供が行う者の場所』から『役務の提供を受ける者の場所』へ見直されました。そのため、この改正により国内にある企業がGoogle AdWordsを利用する場合は、国内で役務の提供を受けることになるので、消費税が発生するということになるのです。
出典:国税庁ホームページ
②課税方式
①の改正内容によって実はひとつ問題が生じてしまいます。それは何かと言うと海外の事業者から消費税を確実に取れるのか?という問題です。
本来ならば役務の提供を行った者が消費税を受け取ることになるので、消費税の申告納税義務が生じるのですが、このような問題を解決するために、リバースチャージ方式というものが導入されました。このリバースチャージ方式というものは、役務の提供を受けた者に申告納税義務が課されるというものです。
そのため、Google AdWordsを利用した場合、本来なら①の改正によりGoogleが納税義務を課されるべきところを、②の改正によりGoogle AdWordsを利用した国内事業者が申告納税義務を課されるということになったのです。
今回の改正を仕訳で考えてみると・・・
今回の改正による変更を仕訳に表してみると以下のようになります。
例)Google AdWordsを利用して1,000円(税抜)を支払う場合
改正前
広告宣伝費 1,000円 / 現金 1,000円 |
改正後
広告宣伝費 1,000円 / 現金 1,000円 仮払消費税 80円 / 仮受消費税 80円 |
このように改正前の場合ですと、不課税取引となるため消費税が発生しませんが、改正後では消費税が発生することになります。
しかし、リバースチャージ方式により、申告納税義務はGoogleではなく電気通信利用役務の提供を受けた者にあるため、広告宣伝のために利用した役務で発生した消費税(仮払い分)80円と、その80円を申告納税するための消費税(仮受け分)80円が両建てとなります。
つまり、仮払い分と仮受け分で同額の80円が両建てとなるため、納税する金額が発生しないことになります。しかし、ある一定の場合では、この消費税で申告納税する必要が生じてきます。
実は消費税の申告が必要ない?
上記の仕訳に関して、基本的には仮払い分と仮受け分が同額のため納税する金額が発生しないと述べましたが、納税する金額が発生しない場合というのは、課税売上割合が95%以上の事業者や簡易課税制度が適用される事業者の場合です。つまり、この場合においては、当分の間はその仕入がなかったものとみなされるので、消費税の申告の際に考慮する必要はないということになります。
改正により影響を受ける人とは?
今回の改正により影響受けるのは、課税売上割合が95%未満の人となります。なお、この課税売上割合とは、課税売上高を総売上高(課税売上高+非課税売上高)で割った数値のことで、この割合が95%未満(非課税売上が5%以上)になると、納税する消費税の金額計算で、仕入に含まれている消費税額の全額を控除するということができなくなるというルールがあります。
ちなみに、非課税売上には、土地の売却や商品券等の譲渡、有価証券の譲渡等がありますが、一般的にはあまり多くありません。つまり、国内で通常の取引をしている企業であれば、まず改正の影響は受けないといえるでしょう。
※課税売上割合についての詳細は、国税庁ホームページをご参照ください。
具体的な数値で見てみると、課税売上の金額が90万円で非課税売上の金額が10万円の企業があったとします。このとき総売上高は100万円となり、その内の課税売上の割合は90%となります。つまり、今回の改正により影響を受ける課税対象となるわけです。
上記の仕訳で説明した広告宣伝費が課税・非課税売上の共通費として、課税売上割合が90%ですから、80円×90%=72円が仮受消費税から仮払消費税分として控除できることになり、残りの8円については雑損失等として処理されることになります。
仮受消費税 80円 / 仮払消費税 72円 未払消費税 8円 → リバースチャージ方式 |
まとめ
いかがでしょうか?今回の消費税の改正は、インターネット上での役務の提供に関して、例えば同じものだったとしても、国外の企業には消費税が課されず国内の企業には消費税が課されるため、税負担の差異が発生することから、その是正がされた形になっています。
今回の消費税の改正では、課税売上割合が95%以上の事業者に対しては当分の間は適用外となっているので、多くの中小企業ではあまり影響がないのではと考えられます。しかし、95%未満の事業者には適用されますので、注意が必要となります。