2015年に発売された、バルミューダ製のトースター「BALMUDA The Toaster」。トースターと言えば、数千円で買える手軽な家電製品のイメージがあります。
2万円もする高価なトースターがヒットしているのはなぜなのでしょうか?今回はこのトースターから、ヒット商品のつくり方について探っていきたいと思います。
高価なトースターがヒットしたのはなぜか?
「2万円のトースター」が売れている!
バルミューダは、2003年に東京で設立された小さな家電メーカーです。これまでに3万円もする高級扇風機「GreenFan」や、4万円を超える価格の加湿器「Rain」などの製品をヒットさせています。
2015年に発売した2万円のトースター、「BALMUDA The Toaster」(以下、BTT)も発売当初から大きな注目を集め、販売も好調とのことです。
BTTの特徴の一つは、製品に5ccの水を注ぐ吸水口があるとこと。この水分によって、表面はこんがり、中はふっくらなトーストが仕上がる仕組みになっているのです。
トーストだけでなく、クロワッサンやフランスパンなど、パンの種類ごとのカスタムモードも用意されています。機能だけでなく、キッチンに馴染むスタイリッシュなデザインにも注目です。
開発したのはバルミューダ社の寺尾社長
BTTを開発したバルミューダ社を率いるのは、寺尾玄社長です。寺尾社長は高校中退後、スペインやイタリア、モロッコなど放浪していたそうです。帰国後は音楽活動もしていたそうなのですが、一念発起してものづくりの道に進んだのだとか。
2003年に、現バミューダ株式会社の前身となる有限会社バルミューダデザインを設立しました。リーマンショックのあおりを受けて経営危機にも遭遇したそうなのですが、上でもご紹介したヒット作の影響で現在はものづくり業界で注目の企業となっています
寺尾社長が意識していることは、体験を売る、ということ。性能や新しい機能に注力しているのではありません。消費者に、いかにして良い体験を提供するかを考えているそうです。
BTTの開発にあたっても、それは同じ。性能を最初に考えていくのではなく、トーストがおいしい、という体験をベースに製品開発を行っていくのです。
雨の日にBTTの着想を得る
寺尾社長がBTTの着想を得たのは、雨の日に行った社内バーベキューだったそうです。どしゃぶりの雨の中、社員が炭火で焼いたトーストがとてもおいしかった。これをキッカケに開発がはじまり、試行錯誤の末にBTTが完成したのです。
製品が完成したあとは、ひたすら試食会で消費者にトーストを食べてもらう。実際にトーストを食べてもらうことで、雨の中で味わった、あのトーストを体験してもらうと言うことなのですね。
この試食会が功を奏し、口コミなどの評判が広がって販売の好調につながったのです。
大手メーカーにはない視点
大手の家電メーカーでは、製品の販売サイクルなどもあって、性能や機能の開発に力が注がれがち。寺尾社長率いるバルミューダ社はそうではなく、消費者に体験や感覚を提供することに主眼を置いています。
性能や機能は後まわし。その点では他の家電メーカーとは目指すところが違いますし、大手にはない製品がつくれるのもそういったところにあるのでしょう。
あとがき
斬新なトースター誕生の背景には、常識に捕われないクリエイティブな考え方と消費者に良い体験をしてほしいという強い信念があったのですね。消費者の心に響く他にはない商品にしたいという想いから、「2万円のトースター」が出来たと考えるとヒット商品となったのも納得です。
今後も消費者に良い体験を提供すべく、バルミューダ社は新たな製品の開発を進めているようです。新しい市場を切り拓いている寺尾社長とバルミューダ社に、2016年も注目ですね。