「インバウンドマーケティング」は、いまやマーケティングにおいて見逃すことができない存在。でも「名前は知っているけど、内容がよくわからない」「実際にどんな風にコンテンツを作ればいい?」と悩んでいる人もまだ多いようです。
今回はインバウンドマーケティングを行う上で知っておきたい点や、成功するためのポイントをご紹介していきます。
顧客を呼びこむインバウンドマーケティング
まずは従来のマーケティング手法である「アウトバウンドマーケティング」と「インバウンドマーケティング」を比較しつつ、その特徴や考え方を抑えましょう。
アウトバウンドマーケティングとは?
企業・店舗がユーザーに対して情報を発信する手法です。情報の内容は原則的に「商品・サービス自体」をテーマにしたものとなっています。
- TV・雑誌・新聞等のメディア広告
- ダイレクトメール
- チラシ
- テレマーケティング
- WEBバナー
- メールマガジン等
インバウンドマーケティングとは?
2006年にアメリカのマーケティング企業Hubspotが提唱した手法です。企業・店舗が情報を用意し、ユーザー(消費者)が検索エンジンやSNSから情報を選び、アクセスします。
ただし提供する情報の内容は「商品・サービス自体」ではありません。消費者の「知りたい」「困った」という疑問や興味に対し「役に立つ情報」です。
- 公式サイトでのコンテンツ展開(エデュケーショナルコンテンツ等)
- 動画配信
- SNS展開(Twitter、Facebook、LINE等)
- ブログ
- SEO対策
ネットが普及した現代、ユーザー達は「商品情報は知りたい時に調べれば良い」という意識を持っています。そのため旧来のアウトバウンド手法で溢れる情報に対しては、その初手で「情報の押し付け」と判断し、情報から背を向けてしまうのです。
これに対しインバウンドの場合、ユーザーは情報を自ら選びとる側に立ち、「欲しい情報が得られた!」という満足感を得ます。その満足感は情報に関わる商品に対する好感度・信頼度を高め、関連する商品・サービスへの興味(ニーズの掘り起こし)へと繋がっていくのです。
インバウンドマーケティングは消費者の「知りたい情報を探す」ことと企業の「有益な情報を配信」することを上手く関連付けることで、消費者に企業・店舗に興味を持ってもらおうというマーケティング手法なのです。
インバウンドマーケティングの成功実例3選!
現在、様々な企業が行っているインバウンドマーケティング。その実例をいくつか見ていきましょう。
コンテンツ展開
KIRIN:おつまみ道場
http://recipe.kirin.co.jp/otsumami/
「KIRIN」公式サイト内にあるレシピコンテンツ。食材・テーマ別に検索可能な「おつまみ」の作り方にテーマが絞られています。
赤ワイン・ビールなどKIRINの販売しているお酒のジャンルに合うおつまみのレシピを紹介しています。各おつまみの紹介ページに、小さく「この料理に合う飲み物」としてKIRINのお酒ページにリンクさせているだけで、商品の宣伝という感じは全くありません。
動画配信
資生堂:youtube公式チャンネル
https://www.youtube.com/user/SHISEIDOofficial/playlists?view=50&sort=dd&shelf_id=11
化粧品メーカー「資生堂」によるyoutube内公式チャンネル。メイキャップやスキンケア・ヘアケアの方法を動画でレクチャーしています。
資生堂商品(メイクアップ用品)と直接的関連の無い「浴衣の着付け・着こなし」等の動画がある点に注目です。着物の着付けは、着付けの初心者や一人で行うのは難しいもの。そんな着付けを動画で解説してくれるのは女性にとって嬉しい存在です。資生堂の女心を掴む手法はさすがですね。
SNS展開
イスクラ漢方薬局:公式Twitter
https://twitter.com/ISKRAkanpo
花粉症対策等の季節に合わせた体の癒やし方、ツボ押しマッサージ、食材の選び方等、健康的な生活を送るためのアドバイスなどが主な内容。フォロワー数は22000を突破しています。
例えば、腸内環境を悪くする食品やその食品を摂る際に一緒に摂ると良い食材といった、直接漢方とは関係のない内容のツイートが多く含まれます。
いかがでしょうか?いずれの企業の内容も、企業が扱う商品の直接的な宣伝ではありませんね。
「その企業のターゲット層」となるユーザーが「これが知りたい!」と思う情報で、なおかつ商品・サービスとはゆるやかな関連性を持たせたテーマとなっています。
インバウンドマーケティングに向いている企業・業種とは?
インバウンドは中小企業向き?
上記の実例・成功例には敢えて知名度の高い企業も挙げていますが、実はインバウンドマーケティングは「中小企業」にこそ向いた手法です。その理由を3つ挙げてみます。
見た目ではなく「内容」で勝負できる
WEBバナー・チラシ・CM等のアウトバウンドの場合、ユーザーの判断材料は「見た目(視覚的印象)」に偏りがちです。そのため一流のモデルやカメラマン、デザイナーを使える大企業の広告の方が圧倒的に有利になってしまいます。
しかしインバウンドマーケティングの場合、ユーザーの判断材料は「情報の役立ち度・信頼性の高さ・面白さ(情報の内容)」です。コンテンツの内容が良ければ、一流企業に負けないマーケティング展開も可能ということになります。
専門性・オリジナル性のある情報提供ができる
インバウンドマーケティングでユーザーが求めるのは、実用的・専門的でオリジナリティがある情報です。
中小企業ならではの独自性を打ち出し、企業のブランディング、商品のイメージアップに繋げることもできます。
タイミングに合わせた情報提供も可能
大企業の場合には宣伝広告に多数の人間が絡むため、コンテンツ企画から情報発信までには時間がかかりがちです。
反対に中小企業の場合には小回りがきくので、その時の話題や時勢に合わせた情報発信をタイミングよく行うことも容易になります。季節性に特化した内容や流行り・話題のニュースなどと関連付けをして、注目を浴びるコンテンツを配信することでより興味を持ってもらえます。
インバウンドマーケティングに向いた商品とは?
以下の様な商品・サービスはインバウンドマーケティング向きです。
- ユーザーの検討時間が長い商品・サービス
例)宝飾品・自動車・住宅・家具・旅行関連等 - 比較検討されることが多い商品・サービス
例)飲食店・宿泊業等 - 購入前の検討・購入後の使用に知識・技術が必要となる商品・サービス
例)IT関連・食品・化粧品等 - リピート使用が見込まれる商品・サービス
例)ヘアサロン・エステサロン・健康食品等 - オリジナリティの強い商品・サービス
例)地域限定の食品、伝統工芸品、独自技術の新製品等
ただし、この例はあくまでも一例です。ユーザーが「欲しい!」と思う情報が提供可能であるならば、「インバウンドマーケティングは全ての業種で利用できるマーケティング手法である」とも言えます。
インバウンドマーケティングを成功させるコツは?
インバウンドマーケティングをスタートさせる前に、以下の点に注意しておきましょう。
ペルソナを作りこむ
ペルソナとは、商品・サービスを購入してくれる「理想的な顧客の人物像(モデルユーザー)」のこと。
年齢、性別、職種、ライフスタイル等、ターゲット層を曖昧にせずにペルソナを絞りこむことで、より適切なコンテンツ作りが可能になります。
顧客のニーズを想定する
コンテンツを企画する上で重要なのは、「顧客が欲しい情報は何か」を考える点です。
- 何に興味を持つのか?
- 商品・サービス関連で「疑問に思うこと」は何か?
- 商品・サービス購入前・購入後に「困ること」は何か?
- 「もっと知りたい」と思うことは何か?
今までの「企業側目線」から離れ、「ユーザー目線(ペルソナの目線)」での情報提供を目指しましょう。
商品は自然に登場させる
コンテンツの中に商品・サービスを絡ませる場合には、あくまでもさりげなく登場させることが重要です。
商品・サービスのPRを必要以上に行うと「単なる宣伝である(役立つ情報が無い)」と感じられ、結果的に企業・商品への好感度・信頼度を著しく下げてしまいます。
コンテンツ更新は定期的に継続する
コンテンツの配信は一度行えば終了というものではありません。テーマに沿った情報を定期的に配信し、WEB上のリピーターとなってもらうことが重要になります。
コンテンツでニーズが発生した状態(見込み客)を商品の検討へ導き、最終的には購買まで繋げていくわけです。散漫な情報配信とならないために、まずコンテンツのテーマをしっかりと絞っておくことも大切です。
アウトバウンドマーケティングをプラスすれば、より効果的に!
従来のアウトバウンドマーケティングも、インバウンドの後から展開させることで効力を発揮してくれます。
いきなり商品情報を押し付けられると、ユーザーは拒否反応を起こすもの。しかしインバウンドで商品への興味が湧いている状態ならば、企業の発信する商品情報・サービス情報を受け入れやすくなっているのです。
- アウトバウンド追加例
- コンテンツからLINE登録の促進(インバウンド)→LINEメッセージで新商品のお知らせ(アウトバウンド)
- コンテンツで登録会員のみに使える機能の導入(インバウンド)→登録会員に対しメルマガの配信(アウトバウンド)
- コンテンツ内でモニターを募集(インバウンド)→テレマーケティング(アウトバウンド)
重要なのは、アウトバウンドの際にも、顧客がインバウンドで得た情報に関連した商品・サービスの紹介を行うという点です。
また顧客が現在「見込み客」なのか「購入検討」なのかといった段階を踏まえ、適切なアウトバウンドを行いましょう。
おわりに
インバウンドマーケティングとは、「ユーザーに好かれ、ユーザーにファンになってもらうためのマーケティング」とも言えるでしょう。
どうしたら好かれるのか?– それは提供する情報がユーザーに寄り添ったものかどうかにかかっています。
自社商品・サービスのペルソナを決定し、ペルソナが「欲しい」と思うであろう情報を考えだすこと。この基礎部分をしっかりと行うことで、インバウンドマーケティングの効果はまったく変わってくることでしょう。